脚本術の大家、ブレイク・スナイダー推奨の映画リストを作った。

リストだけ欲しい人のために

10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 SAVE THE CATの法則を使いたおす! | フィルムアート社で分析対象になっていた、50本の映画のリストを作りました。Googleスプレッドシートのリンクはこちらです。ご自由にお使いください。

私たちはどんなときに胸が熱くなるのか

こんばんは。平田凡斎です。最近はAtCoderのレートを溶かしながらプログラミングそっちのけでフィクションを摂取しております。

正直な話、できるだけ長くお金を稼ぎ続けるだけならプログラミングだけに集中するのが最善手です。しかしノンフィクションや技術書だけを読んでいると、なぜかが心が乾いてくる、心の泉が枯れてくる。こんなにも面白いはずなのに。世の中には工学や数学のことだけを考えて満足していられる(本当に羨ましい)人々がいらっしゃるようですが、どうやら私はそういう人種ではないようです。

AtCoderの過去問を復習するより、大長編ドラえもんを読むことを選んでしまうのはなぜなのでしょうか? 安定した収入への道を捨ててでも、漫画家や小説家を目指す人が後をたたないのはなぜでしょうか? フィクションを何が私たちを惹きつけてやまないのでしょうか? それは面白い作品を読んだり創ったりしたときの胸が熱くなる感覚、他では得られぬ心の水を求めているからでしょう。

そうなると気になるのは、どのようなときに私たちは胸が熱くなるのかと言うことです。このリストはその答えを与えてくれるかもしれないと思いました。

ASDには本当に共感性がないのか

また、「発達障害とは一体何なのだろう」という疑問を抱いていることも動機の一つです。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の人たちは共感性にとぼしいと思われがちですが、ことフィクションに関する限りそうでもないように見えます。例えば私が個人的に知っているASDの方は、「戦姫絶唱シンフォギア」の雪音クリスの曲を弾いて涙を流しています。キャラクター同士の感情の流れについて、「本当に発達障害か?」と驚くほど深い分析を見せてくださる方もいらっしゃいます。どうしてでしょうね?

私自身がASDということもあり、「共感性に乏しいと思われている人々が、ふとしたときにそれを見せる瞬間」、それを再現することに、自分たちについて知るヒントがあるように思えるのです。

良い作品はいつ楽しんだっていいし、その楽しさを分解できたらもっといい

まあ、そんな御託を並べなくても映画は楽しいものですが、どうせ楽しむならその仕組みも一緒に知りたいと思います。

最近はニンジャスレイヤーファイナルファンタジーSのTwitter実況やVTuberの開く生放送に参加するなど、そのときそのときのライブ感を大切にされるかたが増えていますね。しかし私は「たとえ少し古かったとしても、良い作品はいつ鑑賞しても良いものだ」と考えるタイプです。Spotifyでも、12” Classicsなどの自分が生まれる前に作られた作品のプレイリストをよく聞いています。古臭いといえば、そうかもしれませんが……それでもやはり、良い曲はいつ聴いても良いものです。そこには何かしらの普遍性があります。

その楽しさを再現性のあるもの、誰でも使えるものにできればもっと良い。世の中につまらないものが溢れている中で、自分がやることだけでも少しでも面白くしないと貴重な時間がもったいないですよね。そうしたとき、先人の研究に乗らない手はありません。

10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 について

Twitterでフィクションのグランドバトルbotをフォローしています。漫画やアニメでよく見る、いい意味で「あるある」な熱い展開を切り取ったbotです。このbotは1ツイート140文字ということもあり、ひとつひとつはミクロな断片に収まっています。しかし作品全体というマクロな視点で見ても、どうも「面白さ」というものにはパターンがあるように思います。マクロな視点を知るためには、どうすればいいのでしょうか? 先人の知恵に倣うのです。

10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術は、ハリウッドでは著名な脚本家であった故ブレイク・スナイダー氏のベストセラー、SAVE THE CATの法則の続編です。50本の名作映画を10つのパターンに分類し、ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)なるテンプレートに乗せ、15のパートに分解して解説してくれています。いわば脚本界のデザインパターン、達人だけがたどり着けるレシピ集です。

この本はずいぶん前に図書館で借りて読んだ記憶がありますが、そのときは分析対象の映画も観ず、ただへえへえなるほどと読んだだけだったのもあり、内容をすっかり忘れてしまっています。普通に暮らしていたら、図書館の許す2週間では50本の映画などとても観きれませんものね。幸い今は借りずに買ってしまっても生活が傾かないだけの、いくばくかの余裕があります。今回は前作を読んだのをきっかけに、また読むことにしたわけです。ゆっくり付き合いましょう。

再び発達障害について:2時間座っていられるか

私はADHDでもありますが、その中でも動画に集中するのが非常に苦手です。映画のために2時間座るなど拷問に等しい。昨日もSAVE THE CATの法則でビート・シートのお手本として取り上げられていたデンジャラス・ビューティー (字幕版)を観ていましたが、10:45分に観始めた110分の映画に19:00までかかってしまいました。Twitterを観て、少し観てはメモをして……終盤ともなれば、サスペンスの力で座っていられるのですがね。

文字媒体なら一度読み始めたら30分は集中していられるのですが、どうも相性というものがあるようです。子供のころは「ビックリマン2000」や「きかんしゃトーマス」といったアニメに何時間でも集中していられたような記憶があるのですが……なぜこうなってしまったのか。今でもゲーム実況やRTA動画には集中できるので、コツさえ掴めば克服できるのでしょうか? ガールズ・パンツァーを1週するのにも数週間かけなくて済むようになるのでしょうか? 方法は見えません。

しかしここで踏ん張って「永遠の名作」をたくさん摂取すれば、小説や漫画だけでは得られない体験ができるに違いありません。それがメジャー級の脚本家が勧めるものともなれば。そんな期待からこの本を購入しました。

メイキング

さて、映画を観ると決めたのはいいのですが、ちゃんとリスト化しておかないととてもじゃないけど観きれる気がしません。そこでリストの出番です。

50本のタイトルなどいちいち手打ちしていられないので、フィルムアート社の公式サイトにあるものをコピー。以前クーンツの読書リストを作ったときは手打ちしましたが、いまの私には正規表現があります。Chapter.{2}を取り除き、』『\nに置換し……

できあがったスプレッドシートがこちらになります。タイトルだけでなく、ストーリー・タイプの分類や消化率を算出できるようにもしています。

古い映画が多いので、NetflixやAmazonプライムに加入していればきっとお安く楽しめることでしょう。Netflixと契約するついでに、弟にも加入してもらいました。月1200円で同時視聴2台、もともとHD画質で観たいと思っていたので純然たるコスパの上昇(1200円/人 -> 600円/人)です。ワオ。

観ると減るもの、増えるもの

しかし公式サイトに作品リストがあって助かりました。手打ちは悪夢ですもの。紹介ページの目次から『エターナル・サンシャイン』が抜けていることも発見して、誤植を報告できました。『エターナル・サンシャイン』の分析を楽しみに購入する読者の方もいるかも知れませんし、フィルムアート社さんが逃したかもしれない購入チャンスを増やせたと考えれば、一日一善ですね。もうリストに追加する作品もないでしょう。あとは観て、リストを消化するだけ――

解説は50本だが、それぞれに同型の作品タイトルを10ずつ挙げてくれているので、実質500本分の情報が蓄積されていると言える。 Amazonレビュー

……あとでやる!